福岡県八女市 デイサービス・有料老人ホーム 「八女津媛（やめつひめ）」「八女津媛」の思い
私、西口広貴は24歳の時に介護福祉士を取得し、
特別養護老人ホームへデイサービス介護職員として
入社致しました。
まだ、介護保険制度が始まる以前のことです。
サービスの優劣競争はありませんでしたが、
「ご利用者の為」にスタッフはみな
一生懸命考えてお仕事をしていたと思います。
その頃は
「あんたえらいね～」
「若いのによくやるね～」
「ありがたい、ありがたい」と
90歳をすぎた高齢者の方々から
手を合わせて拝まれていたのです。
なんか違う？
なんか変な感覚の中で、
あるときやりがいを失っていきました。
《バーンアウト（燃え尽き）症候群》
１年後に私はたこ焼き屋でたこを焼いていました。
しかし、 2年後またこの介護業界に戻っていました。
やはり自分は「人の為に」何かをしていきたい！
しかし、そこに２回目の挫折、落とし穴があったのです。
「ご利用者の為に」
「あなたの為に」の思いが
大きな失敗だったのです。
あるとき、
ご入居されるご利用者から、
「西口くんアンパンを買ってきて」
と頼まれたのです。
「あなただから頼むのよ。
甘いのが食べたい。大好きなアンパン。」
私はこう答えました
「木下さん（仮名）は糖尿病があるし、
栄養管理されてあるから食べるのは身体の毒になるんです。
木下さんの為にだから～私は買うことはできません」
と答えていたのです。
「木下さんの体のために」の思い。
いいことをしている。
しかし、
毎日毎日私は
「アンパンを買ってきて」と
木下さんから頼まれていました。
そしていつしか私は、
木下さんがこちらに手招きして
呼ばれていたにも関わらず、
手招きする顔を見ることができず無視するようになり、
部屋を通り過ぎるようになっていたのです。
なんか不自然な気持ちのままに・・・。
しばらくそんな日を過ごした朝、
私は普通に出勤しました。
そして木下さんの部屋の前を通った時
いつもは手招きしている木下さんの姿がなかったのです。
「あれっ」と思い、
寮母さんにききました。
「木下さんは？」
すると思いも寄らない返答が、
「昨夜、急に亡くなったのよ」。
昨日も「アンパン買ってきて」と 手招きしていた木下さん。
私は呆然と立ちすくみました。
何が起こったのかしばらくわからないとはこの感覚なのでしょうか。
私は木下さんのまだ片付いていないベットにいき、
昨日の手招きしていた木下さんに本当に心の底から
「ごめんなさい」と感じたのです。
そして涙があふれてきました。
今すぐアンパンをお届けしたい。
そんな思いだったのです。
でも、もう木下さんはそこにはいません。
ほんとに食べたかっただろうアンパン。
なんで、あの時買いに行けなかったのだろう。
申し訳ない気持ち、
ごめんなさい、すみませんと
心の中に取り返しがつかないことをしてしまった。
と謝罪の念でいっぱいです。
私はもうこんな思いはしたくない。
そして、同じ介護の現場で働くスタッフの皆さんにも
同じ思いはさせたくない。そう思うのです。
私は、今ここにあるその人の思い。
いつ命がなくなるかわからない。
高齢者や障害者の方々の介護をするとき、
命がなくなればその思いは叶わない。
だから、
「たかがアンパンいま届けよう」。
「あなたの思いを叶える為にアンパンを届けよう」
そう思うのです。
あの時の「あなたの為」は、本当はいったい何のためだったか。
本当の「あなたの為」とはなんなのでしょうか。
木下さんのいまの思いを介護で叶えること。
その使命感をもって、今、そしてこれからも
この八女津媛という介護施設で、
たかがアンパンの介護、
されどアンパンの介護。
二度とこの思いをしないために、
今、目の前で介護がなくて困っている人に
介護を提供したい。
それは私の思いではなくあなたの思い。
「あなたの思いが叶いますように」。
たかがアンパンの介護を行います。
そんな思いで
「毎日介護」をお届けいたします。
